米ニューヨークでパパラッチによる危険なカーチェイスに巻き込まれたと主張して物議を醸している英国のヘンリー王子(38)とメーガン妃(41)夫妻が、撮影された写真や動画の提出を求めるも「ここは王室特権のあるイギリスではなく、アメリカだ」と拒否されていたことが分かった。16日に出席した慈善団体の授賞式会場を後にした夫妻は、車やバイクに乗った複数のカメラマンに2時間にわたって執拗(しつよう)に追いかけまわされたと主張し、「あわや大惨事になるところだった」と声明を発表した。しかし、信号や歩行者、車の交通量が多いニューヨークでは「ありえないこと」だと疑問の声が上がり、関係者や警察からも「誇張」だと反論が出ている。

報道によると夫妻の弁護団は、「事故寸前の出来事はなかった」と攻撃的な取材活動を否定した写真エージェンシーに対し、書簡で「夫妻の安全強化」を理由に当日の全ての撮影素材を提出するよう要求してきたという。しかし、夫妻にはカメラマンが撮影した素材を要求できる法的根拠はなく、訴訟も起こされていないことから、自分たちの主張を否定したエージェンシーに対する圧力だとの声も上がっている。

パパラッチの写真を受け取った写真エージェンシーのバックグリッドは、英BBCの取材に夫妻の法律チームからの要求を拒否したことを認め、「アメリカは以前から王室特権を拒否してきた」と弁護士がコメントしたという。また、芸能情報サイトTMZも、バックグリッドは「国王のごとく、第三者にそれ(素材)をささげるよう求めることはできない。一般市民に所有物を国王に差し出すよう求める英国王室の特権的なルールは、遠い昔にこの国では否定されていることを、あなたのクライアントとじっくり話し合うべき」と返答して痛烈にやり返したと伝えている。

追跡を逃れるため車を変えた夫妻を途中から乗せたタクシーの運転手は、CNNの取材に対して危険な追跡はなかったと話している。また、TMZが公開した動画でも、停車したタクシーを取り囲んで撮影するカメラマンに対して夫妻の護衛が撮影を止めて離れるよう求めると、「分かった」と素直に引き下がる様子も映っている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)