ミュージカル界を担う若手世代の1人、熊谷彩春(いろは=22)が、ミュージカル「東京ラブストーリー」(27日~12月18日、東京建物Brillia HALL)に出演する。3歳でミュージカルに出会い、夢をいちずに追いかけ、努力してきた。漫画、ドラマの初ミュージカル作品に挑む思い、歌や芝居を追求する気持ちを聞いた。【取材・構成=小林千穂】

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取材は稽古期間中。充実の様子が十分に伝わってきた。4人の主要人物を、30代の空キャスト、20代の海キャスト、2つのチームに分けるダブルキャスト。海キャストの熊谷は、先輩と同世代から感じる刺激を生き生きと語ってくれた。

「私が演じる関口さとみは、空(キャスト)は夢咲ねねさん。アドバイスをくださったり、いろいろ一緒に考えてくださったりとても心強いです。海(キャスト)の唯月ふうかちゃんは1つ年上で、他の3人は同い年。4人でお芝居の話で盛り上がって、意見を出し合えて、部活のような感覚で本当に楽しいです。たくさんのことを勉強できて、吸収できる現場です」

漫画、ドラマで人気の作品。さとみ役でオファーを受け、まずは漫画に触れた。91年のドラマでは主人公の恋のライバル、憎まれ役だったが、漫画ではより丁寧に人物が描かれており共感を持った。

「自分と重なる部分があるなと思いました。さとみは一生懸命自分を探して、背伸びしたり、もがいたり。私もデビューしたばかりで毎日必死です。演じることで、自分を振り返ることにもつながっています」

俳優を目指したきっかけは幼少期、父親の仕事の都合で住んでいたロンドンで、初めて見た「ライオンキング」だ。

「衝撃がすごかったです。それからはずっとソファの上で、ミュージカルごっこをしていました」

帰国後スクールに通い、小学校高学年で劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」に子役で出演した。初めてのプロの舞台は華々しさだけではなかった。

「できないことがたくさんあって、悔しくて稽古場で泣いたりとかすごくあったんです。でも、舞台に立つ幸せを知ってしまったんです。こんなにも楽しいのか! って」

その後、マレーシアに移住するなどしたが、歌のレッスンは続けた。高校3年の時、「レ・ミゼラブル」でコゼットを史上最年少で演じ、大人のミュージカル俳優としてデビューした。最年少の冠がプレッシャーにならなかったのかと聞くと「子供のころから目指してきたミュージカル俳優になれるのかどうか、不安で不安で仕方なかったことを考えると、むしろのびのびしました」

レミゼから3年。出演作を重ね主演もヒロインも務めた。楽しさばかりではないが、周囲の言葉に背中を押されている。

「(共演の)石川禅さんが『若さはどんなベテランの俳優でも喉から手が出るほど欲しいもの。彩春はそれを持ってる。たくさん失敗して挑戦して、もっと自由に彩春らしくやっていいんだよ』と言ってくれた時、ガチガチだった気持ちがすっと抜けた感覚でした。周りの先輩方に支えていただいて、お芝居をする楽しさをだんだんと感じるようになってきました」

「アナスタシア」「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」「マイ・フェア・レディ」…出演したい作品を次々に挙げた。「いつか、いつか! 今は引き出しがどんどんどんどん増えていく感覚がすごく楽しいです。たくさんストックして、いいお芝居をしたいです。気持ちは3歳の時、ソファの上で歌い踊ってた時と変わらないです」と笑った。

■4人の恋愛物語、ドラマ化で人気

「東京ラブストーリー」の原作漫画は、柴門ふみ氏が1988年に発表。愛媛から上京した永尾完治、同僚の赤名リカ、幼なじみの三上健一、高校時代に恋をしていた関口さとみの4人を中心に恋愛物語が繰り広げられた。91年、鈴木保奈美、織田裕二が出演し、フジテレビ系月9でドラマ化され大ヒットした。21年にも時代設定を変えたドラマが放送された。

初のミュージカル版は、2018年が背景。愛媛県今治市の「しまなみタオル」の東京支社に異動になった完治が、アフリカ育ちのリカと新プロジェクトに取り組む。ある日、高校の同級生の三上に会いに行き、さとみとも再会する。音楽は、トニー賞ベストスコア賞にノミネートされた作曲家ジェイソン・ハウランド氏が手掛ける。

<熊谷彩春(くまがい・いろは)アラカルト>

◆生まれ 2000年(平12)4月2日、千葉県佐倉市生まれ。

◆名前 彩春は本名。誕生後、両親が病院からの帰り道、桜が満開になっているのを見て見て命名。

◆コンクール優勝 16年、東京国際声楽コンクールのオペレッタ・ミュージカル部門で1位。中学3年での1位は史上最年少。

◆バークリー音楽大学短期留学 高校2年で夏期講習を受け受講者100人の中のトップ5。帰国後、東宝芸能所属。

◆「レ・ミゼラブル」 19年、コゼットを史上最年少で演じる。

◆出演作品多数 今年は「リトル・ゾンビガール」で主演、「笑う男」でヒロイン。来年4月、ミュージカル「GYPSY」出演。

◆役作り モットーは「できることは全部やる」。さとみの故郷愛媛県今治市を訪れ、焼豚卵飯と地ビールを堪能。保育士の仕事の1日体験も。

◆のどケア 子供のころから加湿器でケアしていた。マイ加湿器は常に持参。

◆映画 休日には映画館で1日3本見ることも。

◆お酒 地方公演に行ったときに購入して飲み比べをすることも。ワインの本も読んだりしている。